生理検査

心電図

心臓は血液を拍出し、これを全身に循環させるというポンプ作用をもっています。この作用は心筋の収縮と弁によってなされますが、その収縮は心筋に電気が流れることによって起こるのです。右心房にある心筋細胞から微弱な電気が発生し、それが心臓全体に伝わります。この電気の流れを体表面でとらえ波形に表したのが心電図です。


電気の伝わり方は心臓の部位によって異なるため、P波は心房の収縮、次のQRSは心室の収縮で生じる波といったように各波形は各部位に対応します。


検査は簡単、両手首と足首にクリップのような電極を、胸には6個の吸盤を付けて、数分安静に寝ているだけでできる検査です。心臓から出ている電気信号をキャッチするわけですから電気をかけるとかしびれるということはありません。


心電図は臨床的に次の診断に有用です。


  • 不整脈:刺激生成異常と興奮伝導異常
  • 心筋障害:狭心症、心筋梗塞など
  • 心房、心室の肥大、拡大
  • その他:人工ペースメーカー、薬物作用、電解質異常など

特に不整脈の分析には有効な検査です。また、入院時や手術前には必ずチェックする検査項目です。しかし、ふつうの心電図は安静時ほんの数十秒のわずかな時間しか記録しないので異常を発見できないことがあります。


例えば

狭心症の場合

心臓をとりまく冠動脈から心臓に送られる血液が少なくなったり途絶えたりする事で起こる病気です。このようなとき、運動負荷をかけて心筋の酸素消費を増やしてやり心電図に変化が現れるかどうか調べます。


  • マスター階段試験
  • トレッドミルテスト

がそれです。


不整脈の場合

安静時心電図では捕まえきれないことがあります。長時間(24時間)心電図を記録することで症状、発生時刻、行動との関連性を調べます。


  • ホルター心電図

がそれです。ホルター心電図は不整脈ばかりでなく虚血性変化の評価、薬物治療の効果判定にも適応されます。

脳波

人間の脳には約140億の神経細胞が存在するといわれています。この神経細胞の電気活動を頭皮上よりとらえ波形に表したのが脳波です。


頭皮上と両耳朶に二十個程の電極をペーストというのりのようなもので貼りつけて検査します。


目を閉じてリラックスして寝ていれば(安静覚醒閉眼といいます)1時間程で終了します。途中次のことをします。


  • 眼を開けたり閉じたりします。
  • 過呼吸:1分間に20から30回の深呼吸を3−4分続けます。
  • 光刺激:フラッシュのような光で、ある周波数で10秒間刺激して10秒間休み、周波数を変えてまた10秒間刺激するというのを数回繰り返します。
  • 睡眠:場合によって自然に眠るまで、あるいは薬を用いて眠らせて検査をします。

いずれも脳の神経細胞の電気活動をキャッチするのですから痛いとかしびれるということはありません。


脳の活動と脳波の関係は・・・


安静覚醒閉眼状態ではα波(8Hz以上13Hz未満)がみられます。暗算などして脳の活動が高まるとα波は減じβ波(13Hz以上)が目立ってきます。外界からの刺激、不安、緊張、驚きなども同じ効果が現れます。逆に脳の活動が低下してくると、θ波(4Hz以上8Hz未満)が目立ってきます。さらに進むと周波数の遅い成分が優勢となりデルタ波(4Hz未満)が主要成分となり、波の振幅も減じてきます。例えば、脳卒中の場合、出血していたり血管が詰まっている側だけ波が遅くなって、しかも波の振幅も低くなります。またてんかんの場合には、尖った波があってその後ゆっくりとした波になる特徴的な波形が現れます。


脳波検査の対象となる疾患は、


  • てんかん
  • 脳血管障害
  • 頭痛、めまい
  • 頭部外傷
  • 精神疾患
  • 脳腫瘍
  • 発達障害
  • 脳炎、感染症
  • 内分泌、代謝性疾患

また、臓器移植で問題になる脳死の判定基準の一項目でもあります。

呼吸機能

呼吸を主につかさどっている臓器は肺です。吸い込んだ空気は気管支を経て、肺の中の肺胞に送られます。肺胞で酸素と体内の炭酸ガスを交換して、呼気として体外に排泄されます。(拡散によるガス交換)

呼吸機能検査は呼吸がスムーズに行われているかどうかを調べる検査です。慢性的な呼吸器疾患の重症度や、大きな手術の前や術後の経過を見る場合に行います。

検査の方法は、息が漏れないように鼻をクリップで挟み、マウスピースをくわえて息を吸ったり吐いたりします。この検査を行う上で一番重要なことは、検査を受ける人の努力です。肺活量などの肺容量の測定は、これ以上吸えなくなるまでできるだけ多く吸ったり、肺の中の空気をすべて絞り出すように吐いたりします。一気に強く息を吐き出したりする検査もあります。いずれにせよ、本人の最大限の努力がないと正確な測定ができません

すこし苦しい検査ですが、痛い検査ではないので気楽な気持ちで受けてみてください。

心エコー

超音波は私たちが耳で聞くことのできる音(20−20000Hz)よりも高い周波数の音です。超音波検査は、超音波を発信しその反射波を測定し、画像に現したものです。空気を含んだ肺、消化器、骨以外のすべての臓器に適応でき苦痛なく反復して行える簡便な検査です。


心エコーで用いられる超音波は2−5MHz(Mメガは100万を示す)です。胸にプローブ(探触子)をあてると心臓の動く様子がリアルタイムで見えます。弁の形状や動き、心臓の各部屋のサイズや壁の厚さ、その動きがわかります。さらにカラードプラーという方法が加わると、血液が逆流しているとか短絡があるとか、血流の状態がわかります。


心エコーが有用な疾患は、


  • 弁膜症
  • 僧帽弁、大動脈弁、三尖弁、肺動脈弁疾患
  • 先天性心疾患:心房中隔欠損症、心室中隔欠損症、動脈管開存症、心内膜床欠損症、ファロー四徴症など
  • 虚血性心疾患
  • 心筋疾患:肥大型心筋症、拡張型心筋症
  • 心臓腫瘍
  • 心膜疾患
  • 肺高血圧症

簡便な検査ですが、高度な肥満や肺気腫の人の場合は、脂肪や肺、肋骨、空気が超音波を邪魔してしまうため見づらいのが欠点です。