呼吸器外科

特徴

呼吸器(肺・気管・気管支・縦隔・胸壁・横隔膜)疾患、特に原発性肺癌、転移性肺腫瘍など悪性疾患の手術治療と原発性肺癌の術後補助治療(完全切除された後の再発予防のための抗がん剤治療)を行っています。原発性肺癌の治療においては、呼吸器内科や放射線診断科の先生方と協議して治療方針を決定しています。最近では、肺癌治療に有効な術前薬物治療も開発されています。術前薬物治療は緻密な管理が必要ですので、当院では呼吸器内科が担当しています。


手術治療の特徴としては、術後患者さんの痛みや息切れの増加などQOL(生活の質)の低下を招かぬように、胸腔鏡を用いたモニター視のみで肺切除を行う完全鏡視下手術(図1)をほぼすべての手術に導入しています。


図1_3D胸腔鏡システム


診療実績など

原発性肺癌手術数は、年間180例前後で推移しています。転移性肺癌を含めると250例の肺癌手術を行っています(図2)。


図2_呼吸器外科全手術数


2016年に3D胸腔鏡システムが導入されてから鏡視下手術の術中の血管損傷回避など安全性が向上し、同システムを用いた手術が飛躍的に増えました。2016年の導入当初は約4割の使用率でしたが、2019年は約9割5分へと増加しました。現在では、ほぼ全例を完全鏡視下で手術を行っています。この期間の術中損傷による開胸移行は1例のみです。


肺癌においては、手術症例数の多い病院ほど術後合併症の発生率や手術死亡率が少なく術後生存率が高いと報告されております。当科における原発性肺癌手術在院死亡数は2022年2例、2024年1例、2025年1例でした。


当科では、ロボット手術は導入していません。


また術前治療後の進行肺癌や気管支形成術あるいは胸壁合併切除を伴うような難易度の高い肺癌手術でも可能な症例では完全鏡視下手術も行っています。さらに2020年から縦隔腫瘍に対しても完全鏡視下手術を導入しました。完全鏡視下手術の増加に伴い術後在院期間も短縮する傾向にあり、導入当初10日が8日に短縮されました。これは低侵襲で合併症の少ない手術が増えているためと考えられます。


当科は肺癌外科治療の進歩を目的としたJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)肺がん外科グループの一員です。JCOGで計画遂行された研究により確立されたエビデンスを日常診療に生かしております。構築されつつあるエビデンスは画像的非浸潤癌に対する縮小手術の適応です。これまでは肺癌に対する標準手術は、ひとつの肺を切除する肺葉切除でした。これに対して縮小手術とは、肺切除量を少なくするとかリンパ節を少なく摘出するとの意味があります。この縮小手術の安全確実な手技のために画像支援システム(図3)や赤外光観察システム(図4:緑色が残すべき肺です)を導入しました。縮小手術の一環として小型肺癌に対する区域切除のエビデンスが確立しましたので、適応と思われる患者様には同法による切除を行い、その件数も増加しています(図5)。



図3_画像支援システム(2018年~)


図4_赤外光観察システム(2019年~)


図5_原発性肺癌術式別手術数



手術までの待ち時間は、初診後おおよそ4週間です。初診時に手術日を決定しますが、禁煙の確認や肺機能改善を見込め術前呼吸リハビリテーションを行う患者さんではこの限りではありません。入院中のスケジュールは「クリニカルパス」に従って行われます。概要は、手術前日に入院して、入院翌日に手術を行います。手術翌日に食事と離床を開始して術後8日で退院です。


術後補助治療は、原発性肺癌手術の病理結果判明後に必要な患者様に説明します。使用する抗がん剤は、テガフール・ウラシル配合剤、シスプラチンとビノレルビン、シスプラチンとペメトレキセドです。前者は内服薬です、後二者は点滴です。腫瘍の大きさや転移リンパ節の有無、組織型により治療薬を選択します。点滴で抗がん剤を使用するときは5日間の入院が必要となり、これを四回繰り返します。


肺癌に対する効果的な薬剤を探索するバイオマーカーが知られています。薬剤としては、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬があります。手術検体でバイオマーカーを探索して必要な患者様には抗がん剤治療の後にこれらの薬剤を使用します。



一般社団法人National Clinical Databaseへの症例登録のお願い

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