トモセラピー (Radixact)

トモセラピー (Radixact)


2021年3月よりラディザクト(アキュレー社)が稼働開始しました。ラディザクトはトモセラピーの最新型の装置になります。トモセラピーは、IMRT(後述)の専用機で、通常のCT装置と似た外観を持ち、内部に小型で高性能な放射線治療装置が装備されているという治療機械です。CT撮影と同じように、治療寝台を動かしなから、治療用の放射線を360度の方向から連続回転しながら照射をしてきます。毎回、装置に内蔵されているCTで撮影をして、治療計画時とのずれを補正し、高精度に照射する技術(画像誘導放射線治療)の機能をもつ装置です。


強度変調放射線治療(Intensity Modulated Radiation Therapy: IMRT)は、高度なコンピュータ技術によって通常の放射線治療(以下、従来法)では不可能であった複雑な形状の線量分布を作り、病変部周囲の正常組織の線量を抑えて、病巣に高線量を集中させることで、腫瘍制御率の向上や合併症の軽減が期待される画期的な治療技術です。


一般的に腫瘍に投入する放射線量を増やせば腫瘍制御率は上昇しますので、腫瘍を制御できる十分な線量を病変部に投与する必要があります。投与線量の増加は、同時に周囲臓器への線量増加にもつながり、合併症の確率も高くなります。そのため、従来法では、腫瘍の発生母地の組織や周囲の正常組織の許容できる線量(耐容線量)が投与線量の制約となり、十分な線量を投与できないことがしばしばあります。


従来法では、各方向の放射線ビーム内の強さはほぼ均一です。しかしIMRTでは、マルチリーフコリメータ(ビーム形状を様々な形にすることができる板状の多分割絞り)を照射中に出入りさせ、照射野形状を刻々と変化させることで照射野内のビーム強度に変化をつけます。そして多方向からのビームを組み合わせて合算した線量分布が最適となるようなプランを作成することができます。IMRTで利用されるインバース・プランという計算法は、ターゲットの線量や周囲臓器の線量などをあらかじめ数値入力で規定し、プランをコンピュータに作成させます。人間が試行錯誤を繰り返しても、理想的な線量分布を作成することは至難の業で、代わりにコンピュータが何千・何万通りの照射法の中から最適なプランを素早く算出してくれます。さらに近年では、IMRTの応用型で、回転照射に強度変調機能を加えた強度変調回転照射法(Volumetric Modulated Arc Therapy: VMAT)という技術も開発されました。回転速度や線量率なども変化させながら強度変調照射を行うというさらに高度な計算技術ですが、これにより治療時間の短縮も図ることができるようになりました。


図1の左は、従来の放射線治療法で計画した全骨盤照射です。 右はIMRT(VMAT)の線量分布を示していますが、腸管の線量を低減することができています。


トモセラピー (Radixact)


図2は、右頭皮中心に広がる血管肉腫の症例の線量分布図を示しています。脳実質への放射線量を抑えた治療が、IMRT(VMAT)を利用することで実現しています。


トモセラピー (Radixact)