院長あいさつ

日本では、生涯でおおよそ二人に一人が何らかのがんと診断され、亡くなる方の四人に一人はがんのために亡くなっています。がんは、多くの人が罹る怖い病気、治らない病気というイメージが強いかもしれません。しかし、近年の医療技術の進歩により明るい兆しも見えています。
当院は、新潟県の都道府県がん診療連携拠点病院として、県民をはじめとする全ての患者さんに最善のがん医療を提供することを基本理念としています。毎年、新たに3500名前後のがん患者さんが治療を開始していますが、そのご病状や背景はさまざまです。それぞれの患者さんにとって最適ながん医療を提供し、患者さんとともに歩んでいくことが私たちの使命であると考えています。私たちは国の第4期がん対策推進基本計画に則り、がん予防、がん医療、がんとの共生の3分野それぞれで、がん専門病院としての役割を果たしてまいります。
がん予防;
がんにならないように、喫煙や飲酒を控え、減塩と野菜・果物の摂取を心がけ、熱い飲食物を避け、身体活動量を増やし、適正な体重を維持することが重要です。このようながんを予防するための生活習慣や、早期発見のためのがん検診の有効性について、行政の皆さまなどと協力し、発信していきます。また、市民公開講座などの機会で地域の皆さまとの交流を進めていきたいと考えています。
がん医療;
ゲノム医療、免疫療法、ロボット手術、高精度放射線治療など、新しい医療技術の開発導入により、治療の選択肢が増加しています。その中には、従来よりも高い効果が期待できる治療や、体の負担の少ない治療が含まれています。その結果、ご高齢のがん患者さんや進行期のがん患者さんにおいても、長期にわたって安定して療養を継続される患者さんが増えています。病気について精細で正確な診断をしたうえで、その結果に基づいて最適な治療法を検討・提案することがたいへん重要です。そのうえで、それぞれの患者さんのお気持ちやご希望を考慮して治療法について相談、決定し、進めていきたいと考えています。
がんとの共生;
がんと診断された患者さんやそのご家族の驚きや不安、落胆やかなしみはたいへん大きいです。私たちは相談支援の充実と早期からの緩和ケアの介入により、そのようなお気持ちに寄り添い、患者さんとご家族が、できるだけ穏やかで安らかな心身状況で療養を継続できるように支えていきたいと考えています。患者サポートセンターと緩和ケアセンターでは、病気のことの他に、お仕事のことや治療費のことなども含めて、何でもご相談いただけるような環境を整えています。
少子高齢化、人口減少などを背景に地域医療を取り巻く環境、病院経営上の課題は厳しさを増しています。そのような中で人材をはじめとする限られた医療資源を効率よく活用し、皆さまの信頼や期待に応えられるように職員一同努力いたす所存です。引き続きご理解とご指導をいただけますようにお願いいたします。
令和7年7月 院長 田中 洋史