骨軟部腫瘍・整形外科:骨に発生する肉腫

骨に発生する肉腫

1) 骨肉腫

骨肉腫は腫瘍性の骨・軟骨形成もしくは類骨形成を示す悪性腫瘍で、原発性悪性骨腫瘍の中では最も発生頻度が高い腫瘍ですが、日本の年間新患数は200-300例程度と推計される稀な腫瘍です。 約50-60%は10歳台に発生します。好発部位は膝周辺(大腿骨遠位、脛骨近位)と肩周囲(上腕骨近位)で、これらの部位で約60-70%を占めるとされています。主な症状は、腫瘍発生部の痛みや腫れです。初期には、レントゲン検査をしてもわからないことも珍しくありませんので、膝周辺や肩の痛みや腫脹が続く場合は注意が必要です。


かつて骨肉腫は最も予後不良な腫瘍の一つとされていましたが、1977年にメトトレキサート大量療法 (HD-MTX) が導入されてから、飛躍的に生存率が向上しました。その後、多剤併用療法の改良が行われ、近年ではHD-MTX、アドリアマイシン(ADM)、シスプラチン(CDDP)、イホスファミド(IFM)の4剤を中心とした術前および術後化学療法が標準的に行われ、生存率が向上しています。初診時に遠隔転移のない、四肢に発生した症例では、現在の5年生存率は70%程度とされています。手術方法も、四肢切断術から患肢温存手術が主体となり、生存者のQOLも改善してきています。患肢温存手術には、腫瘍用人工関節、照射処理骨や凍結処理骨、自家骨移植、仮骨延長法、回転形成術などの様々な再建方法があり、各施設で症例に応じた方法が選択されています。


2) 軟骨肉腫

軟骨肉腫は、腫瘍性の軟骨を形成する悪性の骨腫瘍で、骨肉腫と異なり腫瘍性の骨、類骨形成を示さないのが組織診断の基準となります。原発性骨悪性腫瘍の中では骨肉腫に次ぐ発生頻度です。好発年齢は30-50歳台で、好発部位は体幹(骨盤、肋骨など)、大腿骨、上腕骨近位部です。症状は、腫瘍発生部の痛みや腫脹です。化学療法や放射線治療に抵抗性であり、手術治療が中心となります。手術治療は、骨肉腫と同じように患肢温存手術が主体に行われています。


3) ユーイング肉腫

ユーイング肉腫は、小児や若年者の骨や軟部組織に発生する悪性腫瘍で、原発性骨腫瘍の6%程度であり、小児や若年者に発生する骨の悪性腫瘍では骨肉腫に次いで2番目の頻度です。骨発生の場合、大腿骨、脛骨、上腕骨の長管骨や骨盤骨、肩甲骨、肋骨、鎖骨、下顎骨、脊椎などの扁平骨にも発生します。好発年齢は5-15歳で、男児にやや多いとされています。腫瘍部の疼痛、腫脹に加えて、発熱や血液検査で炎症所見を呈し、骨髄炎との区別が難しいことがあります。治療は、化学療法、手術、放射線治療を組み合わせた集学的治療が行われます。局所治療は手術で腫瘍をしっかりと取り除くことが基本ですが、ユーイング肉腫は放射線が有効な肉腫であり、切除が困難な部位や切除が不十分な場合などには放射線治療を行うのが標準的です。ユーイング肉腫は、診断時に転移がなくても、微小転移が生じている可能性が高いため、全身的な抗がん剤治療が必要です。ユーイング肉腫に有効とされる抗がん剤はビンクリスチン、アドリアマイシン、シクロホスファミド、イホスファミド、エトポシドなどです。手術前と手術後にこれらの抗がん剤を組み合わせた治療をおこなう事によって生存率が改善してきており、日本ユーイング肉腫研究グループによる2020年の報告では、5年生存率が69.6%であったと報告されています。