骨軟部腫瘍・整形外科:骨転移(転移性骨腫瘍)

骨転移(転移性骨腫瘍)

骨転移(転移性骨腫瘍)とは、がん細胞が血液の流れで運ばれて骨に移動し、そこで増殖している状態のことをいいます。骨転移は、どんながんでもおきる可能性がありますが、特に乳がん、前立腺がん、肺がんなどが、骨に転移しやすいがんです。骨転移がおきると、骨が弱くなり、痛みがでたり、ちょっとしたことで骨折してしまうことがあります。骨転移による骨折や脊椎転移による麻痺などの重度の障害がおきると、ひどい場合には寝たきりになることもあります。また、がんの治療を続けられなくなり、生命予後にも影響する可能性もあります。


以前は骨に転移するとがんの末期状態と判断され、治療対象にすらならないこともありました。しかし、現在では、がんに対して様々な治療薬が開発され、がん患者さんの生存期間が延長していますので、骨転移が生じても、すぐに末期状態ということではありません。また、骨転移に対する治療薬(骨修飾薬)や、いろいろなタイプのオピオイド鎮痛薬(麻薬)も開発され、骨転移を生じても、がんの治療を行いながら、骨転移と上手に共存できるようになってきています。


骨転移による痛みが強い場合や骨折がおきそうな場合には、放射線治療や手術治療を行います。放射線治療は身体に大きな負担をかけずに行える治療で、速やかな除痛効果が期待できます。ただし、放射線治療をしてもすぐに骨の強度は改善しないので、大腿骨のような体重のかかる骨では放射線治療を行っても骨折してしまうことがあります。このような場合や骨折してしまった場合には、人工骨頭置換術や 髄内釘(金属の支柱)による内固定術などの骨の支持機能を回復させる手術を行い、術後早期からリハビリが行われます。また、脊椎転移による神経圧迫で麻痺を生じた場合には、神経圧迫を直接的に取り除く手術をしないと麻痺が改善しない場合もあります。ただし、手術は身体に大きな負担がかかるので、がんの進行度や全身状態などをみて、手術を行うかどうかが判断されています。


骨転移よる骨折(1)に対する人工骨頭置換術(2)

骨転移よる骨折(1)に対する人工骨頭置換術(2)


髄内釘による骨折部の内固定

髄内釘による骨折部の内固定