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治療に関した副作用: 貧血
貧血とはなんでしょうか
酸素は生命の維持に不可欠のものです。この酸素を全身にくまなく運搬しているのが血液中の赤血球です(血が赤いのは赤血球の色のためです)。赤血球の主な働きは、赤血球の中のヘモグロビンという赤い色素が肺から酸素を受取り、体内の組織に酸素を運搬し、組織の機能を維持することです。貧血とは、赤血球の数が減少したり、又は赤血球自体の酸素を運搬する能力(ヘモグロビンがこの能力をになっている)が低下したりすることをいいます。
貧血はなぜおこるのでしょうか
(1) 抗がん剤による化学療法や放射線療法による副作用
抗がん剤や放射線は、がん細胞に作用するとともに、他の正常な細胞にも影響を及ぼします。特に血液細胞を作っている骨髄の正常な細胞は抗がん剤や放射線の影響を受けやすく、そのため、血球を作る能力が低下します。しかし、赤血球の寿命は120日と長い為、すぐには影響を受けません。貧血の症状は抗がん剤による化学療法や放射線療法開始後、1~2週間後より徐々に出現してきます。
(2) 胃切除後のビタミンB12の吸収障害
ビタミンB12は赤血球を作るために必要です。胃切除(この場合、どのくらいとったかによりますが)や、胃を全てとってしまうと、ビタミンB12が吸収できなくなり貧血となります。ビタミンB12の吸収には胃から分泌される内因子と呼ばれるタンパク質の助けが必要です。胃を全てとってしまった後でも、ビタミンB12は肝臓に蓄積されているためすぐには貧血になることはありません。貧血が現れるのは、胃をとってから3~4年後です。
(3) 胃切除後の鉄の吸収障害
全身にくまなく酸素を運搬することが赤血球の働きですが、実際にこ の役割を演じているのは、赤血球中に含まれるヘモグロビンです。鉄はヘモグロビンの材料となり、鉄が減少するとヘモグロビンの産生が低下します。鉄剤は胃酸により吸収されやすい形にかわり、十二指腸や小腸から吸収されます。従って、胃切除後は、ビタミンB12の吸収障害と胃酸の減少の相乗効果により、鉄の吸収が障害され2~3年後に貧血を生じることが多くなります。
(4) がんや潰瘍からの出血
胃・十二指腸潰瘍、出血性胃炎、胃がん、大腸がんといった消化管からの慢性出血によって貧血になることがあります。
貧血になるとどのような症状が起こるのでしょうか
軽度(ヘモグロビンが正常の70%以下)の貧血では必ずしも症状は現れません。また、慢性の貧血は徐々に進行するため、自覚症状のない場合もあります。一般的には顔色が悪く、まぶたの裏が白くなったり、口の中全体の赤みが減ったりします。
ヘモグロビンが正常の59%以下になってしまうと、体内の酸素を補うために、多くの血液を送らなければならず、心拍数が増加したり、少しの運動をしても息が切れたりします。
ヘモグロビンが正常の40%以下になってしまうと、頭痛や、めまい、 耳なり、集中力の低下、不眠になります。また、体のすみずみまで酸素がまわらないため、疲れやすくなったり、手や足が冷えたりします。
ヘモグロビンが正常の30%以下になってしまうと、食欲がなくなったり、はきけやむかつき等があらわれます。
ただし、ここにあげた貧血の程度と症状はあくまでも目安であり、年齢や性別、貧血の原因や健康状態などにより個人差があります。
貧血になったらどうしたらよいでしょう
(1) 日常生活について
- めまいや立ち眩みが強い場合は、ゆっくりと動き、急な運動はさけましょう。
- 体のすみずみまで酸素がまわらないため、新陳代謝が低下していますので保温に心がけてください。
- 上記と同じように、体のすみずみまで酸素と一緒に栄養分もゆきとどかないため、抵抗力が低下していますので、手洗いやうがいを行ってください。
(2) 食事について
- 一日三食規則正しく食べましょう。
- たんぱく質を多く含む食品をとりましょう。
- 毎日の食事で、卵 肉類 魚介類 牛乳・乳製品 大豆および大豆製品の五種類を組み合わせて取るようにしましょう。
- 鉄欠乏性貧血の人は鉄分を多く含む食品を取るようにこころがけましょう。
[ 鉄を多く含む食品例 ]
レバー、かき、干しそば、かつお、春菊、ほうれんそう
パセリ、そば、ひじき、シジミ、プルーン、レーズン等 - ビタミンCは食品に含まれる鉄が体で利用されるためになくてはならないものです。毎日必ず食べましょう。
[ ビタミンCを多く含む食品例 ]
ブロッコリー、れんこん、さつまいも、小松菜、カリフラワー
キャベツ、キーウィフルーツ、レモン、オレンジ、いちご、柿 - ビタミンB12は正常な赤血球を作るためになくてはならないものです。
[ ビタミンB12を多く含む食品例 ]
ブロッコリー、ほうれんそう、グリーンアスパラガス、トマト
カリフラワー、レタス、キャベツ、玉ねぎ、にんじん、バナナ
ピーナッツ、いちじく、くるみ - よくかんで食べましょう。
食品中の鉄やたんぱく質など、血液の材料になる栄養素が効果的に利用されるために胃酸は大切な役割を果たしています。胃酸は胃液の中に含まれていますが、胃酸の分泌が少ないと食欲も減退して、必要な栄養量も消化吸収されにくくなります。よくかんで食べると胃酸の分泌がよくなりま す。
(3) 鉄剤について
鉄欠乏性貧血の場合、足りない鉄を補給するために鉄剤を服用することになります。経口剤としてはスローフィー、フェルム、フェロミアなどがあります。人によっては、鉄剤を服用よると鉄が胃の粘膜を刺激するため、 はきけ、むかつき、下痢などを起こしてしまう場合があります。このような症状が現れ、指示された通りの服用ができない場合は主治医に報告しましょう。貧血は、鉄剤がきちんと服用されれば、約6週間で改善されますが、例え貧血が改善されたからといって、すぐに鉄剤の服用をやめてはいけません。 なぜならば、貧血の人は、体の中の鉄の蓄えをすべて使い果たしていますので、体内に鉄を蓄えておくため、貧血が改善しても医師の指示があるまでは鉄剤の服用を続けてください。また、定期的に検査をうけましょう。
経口的に服用ができない場合、服薬による効果がない場合は注射による方法もあります。なお鉄剤を服用しているときは、内服後1時間をすぎるまでは緑茶やコーヒーなど飲まないでください。それは鉄剤の吸収には30分程かかり、これらの飲み物はタンニンを含んでいるので、せっかく服用した鉄剤の吸収を悪くするからです。便の色が暗緑色か黒色になりますが、 鉄剤によるものですので心配しないでください。
(4)ビタミンB12の注射について
胃を切除した人(切除した大きさにもよりますが)や、胃を全てとった人は、ビタミンB12の注射が年に1~2回必要となります。