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頭頸部のがん: 唾液腺がん
1. 部位と機能
唾液腺は唾液を作る臓器で、大唾液腺は耳下腺、顎下腺、舌下腺に分けられ、小唾液腺は口や咽頭の粘膜に存在します。唾液腺がんのほとんどは耳下腺と顎下腺に発生し、頭頸部癌のなかでも5%程度と少なく病理組織も多彩であることが特徴で、病理組織によって治療法の詳細な検討が必要になります。耳下腺がんは両方の耳の下にある耳下腺から発生し、耳前部の腫脹が自覚症状であることが多いですが、進行すると痛みもしくは顔面神経麻痺(顔の筋肉が動きにくくなること)を伴います。顎下腺がんは下顎骨の下にあり、ほとんど症状がありませんがときに痛みを伴うことがあります。舌下腺がんは口腔底(こうくうてい;舌と歯ぐきの間)の腫れが特徴ですが、前にも述べた口腔底がんとの区別が必要です。
2. 症状
唾液腺がんの診断は触診、細い針で腫瘍細胞を吸引して検査をする穿刺吸引細胞診や組織検査で病理組織診断(病理医による組織の顕微鏡検査)を行います。さらにCT、MRI、PET/CTなどで進展範囲、頸部リンパ節転移、遠隔転移の有無を調べ、病期分類を決定し進行度を判定します。
3. 治療
手術は主に耳下腺がんについて記載します。耳下腺がんの手術はA耳下腺浅葉切除、B耳下腺全摘、C耳下腺拡大全摘に分けられます。まずAは耳下腺がんのなかでも腫瘍が大きくないタイプに施行されます。Bは腫瘍が大きく耳下腺全体に広がっているが、耳下腺にくるまれているタイプが適応です。Cは腫瘍が耳下腺外に露出して、周囲の組織(皮膚、筋肉、軟骨、骨)に浸潤しているときに施行され、組織欠損が大きいときには腹直筋皮弁などの遊離組織移植が必要になることもあります。以上の手術の際に顔面神経の扱いは、術前に顔面麻痺のある場合や、神経が腫瘍に巻き込まれているような場合は切除し、可能な限り神経再建を行います。腫瘍と神経に間に耳下腺組織がある場合はなるべく保存を行います。
4. リハビリ
再建術の方は、手術後に食事や言葉の機能低下、首から肩にかけての知覚および運動障害が出現します。なるべく治療後の機能低下が少なくなるように、嚥下リハビリ(飲み込みの訓練)、肩の運動リハビリなどを行い、機能維持や回復のため多職種によるチーム医療を行います。