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皮膚がん: 悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)
悪性黒色腫(メラノーマ)は、皮膚の色を作るメラニン細胞もしくはホクロの細胞が悪性化したもので、皮膚がんの代表格です。白色人種に多くみられ、日本人における発症は人口10万人あたり年間1~2人の割合ですが、近年は増加の傾向にあり、その理由として人口の高齢化や欧米型への生活スタイルの変化が挙げられています。皮膚の悪性黒色腫は全身のどこにでも生じますが、日本人の場合は手、足などの身体の末端部に多く、4分の1は足底(足のうら)に発生します。
診断のポイント
最初は黒いシミとして始まり、徐々に不規則な形をとって拡がります。早期の悪性黒色腫とホクロとを肉眼的に鑑別するのは困難ですが、診断のポイントとして、
- 全体の形が非対称的で、縁どりが凹凸不整
- 黒色、茶褐色、青色などが入り混じり、色の濃さにもムラがある
- 大きさが7mm以上(生まれつきのホクロを除く)
- 大きさや形が変化してきている
などの徴候がみられる場合は要注意です。早期の段階を過ぎると、表面に腫瘤(こぶ)を形成するようになり、出血や潰瘍を伴います。
爪の悪性黒色腫も日本人に比較的多くみられます。爪の縦方向の黒い線が初発症状の場合が多いですが、これは日本人では正常でもときに認めます。黒い線の幅が拡大する、爪のまわりの皮膚に黒いしみだしを認める、それらに伴って爪が変形してくる、という場合には悪性黒色腫を疑う必要があります。
ホクロは悪性化するか?
原則として、生まれた後に生じた通常のホクロが悪性化することはありませんが、数cmを超えるような大きなホクロが生まれつき存在する場合は、非常にまれですがそこから悪性黒色腫が発生することがあります。局所麻酔による日帰り手術で済むものが大半ですので、生まれつきのホクロは成人までに切除することをおすすめします。
生まれつきのホクロから発生した悪性黒色腫
悪性黒色腫の治療
手術治療が基本です。がんを含めた広めの切除を原則としますが、早期病変であれば病巣から5mm~1cm離した切除のみでほぼ100%の治癒率が得られます。センチネルリンパ節生検は、放射性同位元素や色素を用いて入口にあたるリンパ節を映し出し、それを切除してリンパ節転移の有無を調べる検査です。転移がみられた際にはリンパ節の全切除や、抗がん剤による術後補助療法をお勧めする場合があります。
切除ができない進行例に対しては、主に抗がん剤治療が行われます。悪性黒色腫のがん細胞は、生体にとって異物として認識されやすいという特徴を持つため、がん免疫療法の効果が期待できます。2023年現在で悪性黒色腫に用いられるがん免疫療法薬は、オプジーボ、キイトルーダ、ヤーボイの3種類です。また、日本人の悪性黒色腫の3割程度にBRAF(ビーラフ)という遺伝子の変異がみられ、その場合にはBRAF変異がん細胞を狙って攻撃する分子標的薬を使うことができます。悪性黒色腫の分子標的薬には、タフィンラー・メキニスト併用、ビラフトビ・メクトビ併用、ゼルボラフがあります。
悪性黒色腫に限ったことではありませんが、最も重要なことは早期発見、早期治療です。取り越し苦労で済めば幸いですので、気になるホクロ、シミなどがあれば、皮膚科に遠慮なく御相談下さい。