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- 第39巻第2号 2000年7月
第39巻第2号 2000年7月
目次
総説
- 胸部食道癌に対する外科治療成績の現況:1(63)
田中乙雄、藪崎 裕、瀧井康公、土屋嘉昭、梨本 篤、佐々木壽英
臨床経験
- 造血器腫瘍を合併した婦人科領域悪性腫瘍の検討:5(67)
根本啓一、太田玉紀、本間慶一、本間 滋、笹川 基、塚田清二、高橋 威、張 高明
資料・統計
- 1999年婦人科入院悪性腫瘍統計:11(73)
高橋 威、本間 滋、笹川 基、遠藤道仁、三井卓弥、塚田清二、田村 希、西川伸道 - 1999年産科分娩統計:13(75)
西川伸道、田村 希、塚田清二、笹川 基、未間 滋、高橋 威 - 1999年中央手術部手術統計:15(77)
- 1999年放射線治療の概要:23(85)
斎藤真理、植松孝悦、山ノ井忠良、椎名 真、小田純一、清水克英、佐藤洋子、小林晋一 - 1999年度肺がん検診喀疾細胞診成績:26(88)
宇佐見公一、村木秀樹、桜井友子、落合広美、小林由美子、平山智香子、泉田崔緒里、佐藤由美、北津 綾、村山 守、島津ハナ、紫竹伸子、太田玉紀、本間慶一、根本啓一 - 1999年病理部業務統計:30(92)
村木秀樹、桜井友子、落合広美、宇佐見公一、平山智香子、小林由美子、泉田佳緒里、佐藤由美、北津 綾、村山 守、島津ハナ、紫竹伸子、太田玉紀、本間慶一、根本啓一 - 1998年度消化器内視鏡検査統計:35(97)
加藤俊幸、秋山修宏、本山居隆、船越和博、小堺郁夫、佐藤浩一郎、小越和栄、武石雅幸、本多妙子 - 1999年発表論文一覧:39(101)
- 1999年学会・集会発表一覧 47(109):47(109)
- 「からだのとしょかん」1999年の利用状況とアンケート調査報告:67(129)
有田由美子
その他
- 介護保険に関わる病院の役割:76(138)
藤沢直子
抄録
- 第18回新潟がんセンター集談会:83(145)
要旨
胸部食道癌に対する外科治療成績の現況
Outcomes of Surgical Treatment for Thoracic Esophageal Cancer
田中乙雄、藪崎 裕、滝井康公、土屋嘉昭、梨本 篤、佐々木壽英
Otsuo TANAKA,Hiroshi YABUSAKI,Yasukimi TAKII,Yoshiaki TUCHIYA,Atsushi NASHIMOTO and Juei SASAKI
頚部食道癌を除いた食道癌186例の外科治療成績を各因子別に検討し当科に於ける食道癌外科治療の現況を報告する。手術直接死亡例、在院死亡例、他病死を含む全症例の5年生存率は48.1%である。各因子別に見た生存率は占拠部位別にみた5年生存率はそれぞれUt58.3%、Mt44.9%、Lt64.3%、Ae24.2%であり、Ae例の予後が不良であったが他の部位では生存率に差を認めなかった。リンパ節転移との関係ではリンパ節転移陰性で5年生存率79.7%であったのに対して転移個数1〜3個では5年生存率25.8%、4〜7個14.1%、8個〜では3年以上の生存例を認めず、転移個数が増すにつれて治療成績は不良となった。
今回検討より、食道癌治療成績向上の為にはリンパ節転移陽性症例に対する補助化学療法の併用は必須のみならず、さらに化学、放射線療法をいかに有効利用していくかが今後の検討課題と考える。
造血器腫瘍を合併した婦人科領域悪性腫瘍の検討
Gynecologic Malignancies Associated with Mailgnant Hematopoietic Disorders
根本啓一、太田玉紀、本間慶一、本間 滋、笹川 基、塚田清二、高橋 威、張 高明
Keiichi NEMOTO,Tamaki OHTA,Keiichi HONMA,Shigeru HONMA,Motoi SASAGAWA,Seiji TSKADA,Takesi TAKAHASHI and Takaaki CHOU
当院における過去38年間の婦人科領域悪性腫瘍と造血器腫瘍の合併例を臨床病理学的に検討した。
子宮頚癌と造血器腫瘍の合併は1842例中5例(0.27%)で、AML(M2), CML, MDS(RA), NHL(diffuse,medium),ホジキン病それぞれ1例。子宮体癌との合併は414例中3例(0.72%)で,AML(M1)、AML(M2)、NHL(diffuse,large)それぞれ1例。悪性卵巣腫瘍との合併は436例中5例(1.15%)でAML(M0),AML(M4),NHL(diffuse,lymphoplasmacytic)それぞれ1例,骨髄腫2例。膣癌との合併は80例中MDS(RAEB)の1例(1.25%)。婦人科領域悪性腫瘍が先行した症例は8例、造血器腫瘍が先行した症例は3例、他の3例はほぼ同時に発見されていた。治療関連性白血病と考えられた症例は4例で、2例はアルキル化剤、2例はエトポシドが関与していた。前者の白血病期間は8ケ月、10ケ月、後者は,13日、18日で、特に後者で予後不良。また、前者は後者に比較して、血液異常発現まで期間が長く、MDS像を呈し、染色体異常にも差がみられた。なお、剖検出来た5例中、剖検時一次癌、二次癌ともに浸潤あるいは転移していた症例は2例、一次癌のみ浸潤していた症例が1例、逆に二次癌のみ浸潤していた症例は1例、そのほか、同時発見例の1例では血液疾患(ホジキン病)のみ浸潤していた。
1999年度肺がん検診喀痰細胞診成績
Sputum Cytology in Mass Screening of Lung Cancer in 1999
宇佐見公一、村木秀樹、桜井友子、落合広美、小林由美子、平山智香子、泉田佳緒里、佐藤由美、北澤 綾、村山 守、島津ハナ、紫竹伸子、太田玉紀、本間慶一、根本啓一
Kouichi USAMI,Hideki MURAKI,Tomoko SAKURAI,Hiromi OCHIAI,Yumiko KOBAYASHI,Chikako HIRAYAMA,Kaori IZUMIDA,Yumi SATOU,Aya KITAZAWA,Mamoru MURAYAMA,Hana SHIMAZU,Nobuko SICHIKU,Tamaki OHTA,Keiichi HOMMA,Keiichi NEMOTO
1999年度肺がん検診喀痰細胞診は22市町村より委託を受け、4452名の検査を実施した。
男女の内訳は、男性3945名(88.6%)、女性は507名(11.4%)であり、有効検体率は4452例中4422例で99.3%であった。その結果、日本肺癌学会の判定基準に準じ17名(0.38%)の要精検者を判定した。要精検者17名の男女の内訳は、男性16名(94.1%)、女性1名(5.9%)で、年齢は52〜88才(平均71.8)で推定された病変は扁平系が16例、腺系1例であった。精検受診者は17名(精検受診率は100%)で、精査の結果、肺癌2名、咽頭癌1名、計3名の癌(精査後癌発見率は17.7%)が発見された。喀痰細胞診による癌発見率は人口10万対比68であった。
1999年病理部業務統計
Annual Report of Pathology in 1999
村木秀樹、桜井友子、落合広美、宇佐見公一、平山智香子、小林由美子、泉田佳緒里、佐藤由美、北澤 綾、村山 守、島津ハナ、紫竹伸子、太田玉紀、本間慶一、根本啓一
Hideki MURAKI,Tomoko SAKURAI,Hiromi OCHIAI,Kouichi USAMI,Chikako HIRAYAMA,Yumiko KOBAYASHI,Kaori IZUMIDA,Yumi SATOU,Aya KITAZAWA,Mamoru MURAYAMA,Hana SHIMADU,Nobuko SHICHIKU,Tamaki OHTA,Keiichi HOMMA and Keiichi NEMOTO
1999年(1月〜12月)病理部業務統計を報告する.総依頼件数は,24,297件であった.
内訳は,組織診断11,267件,細胞診12,928件,電子顕微鏡検索61件,病理解剖22件,本年3月から開始した遠隔病理診断(Telepathology)によるコンサルテーション19件,術中迅速診断(組織診+細胞診)674件,院外受託検査は992件で,肺がん検診喀痰細胞診は4,578件であった.業務件数では,作製ブロック数44,638個,各種染色標本79,298枚であった.当年本格化したIn Situ Hybridization(ISH)によるEBウイルスの遺伝子検索は54件であった.
1999年は,病理業務のシステム構築に追われた年であったが,当病理部にとって,第三世代のスタートを切った記念すべき年となった.
1998年度消化器内視鏡検査統計
Statistics of Gastroenterological Endoscopic Examinations in 1998
加藤俊幸、秋山修宏、本山展隆、船越和博、小堺郁夫、佐藤浩一郎、小越和栄、武石雅幸、本多妙子
Toshiyuki KATO,Nobuhiro AKIYAMA,Hirotaka MOTOYAMA,Kazuhiro FUNAKOSHI,Ikuo KOZAKAI,Kouichirou SATO,Kazuie OGOSHI,Masayuki TAKEISHI and Taeko HONDA
1998年度内視鏡室における検査件数は上部消化管内視鏡6,859件,大腸内視鏡2,665件,膵胆道検査(ERCP)178件,気管支内視鏡700件の合計10,454件であった.とくに大腸内視鏡検査が296件(前年比+13%)も著増している.生検総数は4,711件に増加し,上部消化管の44%,大腸の59%に行われ,粘膜染色は4,259件とさら多く上部消化管の47%に施行されている.内視鏡的治療は上部消化管では125件(+3%),大腸では358件(+28%)に増加し,早期食道癌の17例,早期胃癌71例,早期大腸癌131例が内視鏡的に切除されている.診断された早期胃癌は205例のうち71例(34.6%)が内視鏡的に切除され,さらに15例(21%)は入院せず外来治療であった.なお9月に「がん予防総合センター」が設置され,二次精検機関として上部消化管だけでなく大腸内視鏡も即日検査可能の体制が整えられた.即日検査は器械を介した感染だけでなく事故防止に注意が必要である.
「からだのとしょかん」1999年の利用状況とアンケート調査報告
Annual Report of KARADA NO TOSYOKAN for Medical Information Service in 1999
有田由美子
Yumiko ARITA
「からだのとしょかん」は、1999年1月から外来棟の1室が常設図書館として改築され、あかね文庫とともに最初の提供場所から移転した。それに伴い開館時間の延長、インターネットへの接続、予算措置の実現、院長相談日の新設など種々の変化があった。
1999年1月から12月までの利用状況は、開館日数が188日、利用者数は3,246人、総貸出数は1,554冊、パソコン利用が240人、コピー利用239件であった。利用者アンケートは、1999年6月から9月まで行った。回答者は110人、年齢層は19才から81才であった。利用の目的は「病気の説明」が一番多く(67%)、次に「治療法(26%)」、「退院後の食事や生活について(23%)」、「検査(13%)」、「薬(13%)」「手術(10%)」の順に知りたくて来室していた。また、69%の人が必要としていた資料があり、充分な内容であったと回答していた。
介護保険に関わる病院の役割
The Role of Hospitals in Long-term Care Insurance
藤沢直子
Naoko FUJISAWA
平成12年4月に介護保険制度が開始された。当院でも高齢患者が増加しており、(1)主治医意見書の作成、(2)介護保険対応の訪問看護、(3)高齢患者の退院時援助の面で介護保険制度にかかわっている。特に在宅療養ではベッドや車椅子の貸与、訪問看護、訪問入浴等、介護保険による在宅サービス利用が不可欠である。病院には、(1)患者・家族が安心して療養できるよう、介護保険の利用について積極的に情報提供、申請の援助等を行うこと、(2)院内及び院外関係機関との連携に努め、できるだけ早期に援助を開始すること、(3)患者や家族のニーズを尊重し、十分な説明と同意の上で援助に当たることが求められる。このことは円滑な退院促進、在院日数短縮にもつながる。また、介護保険を通じて地域連携が強化されていることを背景に、在宅のがん医療、ターミナルケアの分野でも地域ネットワークの構築が必要になってくると思われる。